アレな感じに

■新訳男女 シリーズ第12部■
 
 好物のお菓子は「チョコあ―んぱん」、好きなタイプは蓮舫さん、早稲田大学4年で「Re:Bit(リビット)」の代表…。

薬師実芳さん(中央)と「Re:Bit」のメンバー。「少しずつ、を何度でも」が合言葉だ
薬師実芳さん(中央)と「Re:Bit」のメンバー。「少しずつ、を何度でも」が合言葉だ
 やっくんこと薬師実芳(みか)さん(22)は、高校や大学で教壇に立つと「私はトランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)です」ではなく、そんなふうに自己紹介を始める。「Re:Bit」はセクシュアルマイノリティー(性的少数者)の問題を切り口に、違いを受け入れ合える社会を目指す学生団体。学校での授業は、その活動の一環だ。

 LGBT(同性愛、両性愛、トランスジェンダー)であってもなくても、セクシュアリティー(性の在り方)はその人の一部であり全てではない。「トランスジェンダーの薬師」ではなく「チョコあ―んぱんが好きなやっくんはトランスジェンダーでもある」-そう捉えてもらえないか。

 授業では少人数に分けた生徒の班に、性的少数者のメンバーが「見える存在」として入り語り合う。テレビの向こうの話ではない。「この現状を作り出したという意味では誰もが当事者です」。そう訴えかける。

 今、準備に奔走するのが「もう一つの成人式」だ。成人の日の6日後。来年1月15日、東京の300人規模のホールで「LGBT成人式」を開く。セクシュアリティーや年齢は問わない。好きな服を着て、写真を残し、将来に向けて一歩踏み出す。「誰もがありのままの自分を肯定的に受け止め、祝える場にしたい」

 そう語る薬師さんも小学校高学年のころから、女性として生まれた体に違和を感じていた。友人が多くても「みんなが好きなのは本当の僕じゃない」と自尊心が傷ついた。「LGBTの人たちは、自分自身を誇るきっかけをつかむのが難しい」。だから成人式をその契機にしてほしいのだ。

 メンバーの一人で新成人の達也さん(19)は中学時代から、どう生きたらいいか悩んできた。光が見えたのは同じゲイ(男性同性愛者)の人が書いたエッセー本。初めて自分を肯定できた。いつだって、誰だって、何かのきっかけで変わることができる。繰り返し(Re)、少しずつ(Bit)でも前へ。ありのままの自分であるために。

 「自分らしく生きたい」という言葉を、今回の連載取材で最も多く耳にした。同じレズビアン(女性同性愛者)でも考え方やセクシュアリティーは異なる。そんな当たり前のことに目をそむけ、ひとまとめにし、個々の存在を見えないことにする。多様な色を、女と男の2色に塗りつぶして。

 連載タイトルの背景にある虹は、ぼやけている。日本では7色とされるが、国や文化によって異なる。日によって3色に見えたりもする。そもそもグラデーション(濃淡)であって、私たちが7色という境界線を引いているにすぎない。

 境界という偏見を取っ払い、誰もが濃淡に溶け込んでいると考えていきたい。繰り返し、少しずつでも。本当の虹色が見えてくるかもしれない。

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 LGBT成人式に関連して福岡市でも、LGBTの交流組織「にじだまり」(http://x14.peps.jp/nijidamari/)が1月8日、発足2周年記念と合わせて交流会を開く。 =おわり

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 ▼象徴の虹色

 セクシュアルマイノリティー(性的少数者)の人たちが、自らの尊厳や社会活動の象徴として虹色の旗を使用している。1970年代、米国でゲイの人たちがパレードをする際に考案された。6色のデザインが多い。現在は虹色のステッカーやバッジを身に着け、自己のセクシュアリティーを表明したり、LGBTでない人たちも連帯の証しとして使用したりしている。


=2011/12/15付 西日本新聞朝刊=